アリノスダマの栽培

お待たせしました・・・。やっとこの記事を書きます。

アリダマ育ててみたいと思ってもなかなか情報が無くて困ってる方多いと思います。園芸店で販売してても、まず販売員はたしかな情報を知らないはず。
アリダマの情報も書いていきたいですが、まずここでは栽培の基本的な事を書いていきます。

アリノスダマの基本情報
まずアリダマと言っても種類があって、Myrmecodia、Hydnophytum、Myrmephytum、Squamellaria、Anthorrhiza の5属があります。
それぞれ標高や環境はバラバラなので、この属だからこう、ってのは特にないですがSquamellariaは湿度高めの涼しい環境を好むと言えるかな。雲霧林のアリダマ。
あとHydnophytumは基本的に強いです何故か。枝が細いからもし腐っても切除しやすいし。
低地のアリダマは基本屋外栽培が良いです。湿度とか特に気にしなくても大丈夫。室内だと徒長しやすいので勧めません。あとワーディアンとかもやめた方が良いです。
高地のアリダマはもちろん高温アウト、湿度は高めで。ほぼ手に入れる機会無いだろうけど・・・
一部長い棘や毛で覆われたようなアリダマがありますが、大抵が雲霧林のアリダマで気根が変化したものです。

あとアリが居なくても育ちます。レカノもですが、アリダマの空洞は虫コブではなく所謂ダニ室です。植物自体が成長とともに部屋を作って、そこにアリが住み着きます。アリが居ないと枯れるとか成長しないということはありません。ただ、自然界ではアリが虫など追い払ったりメンテナンスをしてる訳ですが、アリがいないので空洞は無防備。どこかで異常があっても害虫が入っても全く気付けません。腐りやすい理由のひとつかもしれないですね。

基本的なこと書いていきますが、アリノスシダと基本的にほぼ同じ。
●水好き
●通風が良い場所で管理
●日照好き
●肥料好き
熱帯雨林や雲霧林の植物
●Myrmecodiaは室内不向き(徒長しやすく作りづらい)
種に限らず栽培は難しい方
腐りやすい
山採り株と実生株では次元が違う難しさ

って感じです。
想像するとなんとなくわかるんですけど、多肉の芋は大体過酷な環境に耐えられるように養分や水分を貯めてるとかありますけど、アリダマの芋は空洞でアリを住まわせる為に肥大してるんです。もちろんある程度放置しても萎まなかったりするんですが、それは根が張って健康的な状態でのみです。それでも水好きだけど。
水好きで中が複雑な空洞になってる芋・・・超腐りやすそうですよね。

あとレカノよりも寒さに弱いです。15℃以上推奨。これ下回ったら少なからずダメージはあるはずだと思ってください。温度保てない環境には全く向いてないです。

山採りと実生株の違いはまず一番は根が有るか無いかですね。山採りは基本大体根が無かったり少なかったりするので、まず発根させることから始まるのですが、湿らせておかないと発根してこないし、放置してるとみるみる萎んでいきます。
ここら辺の方法は後で書くとして、まずは園芸店とかで買える入手しやすいものらへんから。



入手しやすい種と管理
Myrmecodia tuberosa
       tuberosa papuana
       beccarii
       
Hydnophytum formicarum
        moseleyanum(papuanumで流通)
        puffii(perangastumで流通)
        radicans

radicansは最近流通し始めたみたいだけどこの辺りかな。
園芸店で手に入るのはそもそもそんなに難しくない種なので少し気を付ければ結構簡単かも。しかも大体実生株。鉢植えのはほぼ間違いなく実生株です。
アリノスダマは着生植物です。(ニューギニア島の高地には一部地生の種がある)
園芸店では鉢植えで培養土や細かいヤシガラ等のポット植えで売ってますが、個人的には植え替えを勧めます。


理由は5つ。
芋の状態が分かりにくい、ネジラミが付きやすい、根腐れしやすい、用土が合ってない、最後に・・・・・・かっこ悪い笑
せっかく着生する珍奇な芋ですよ?!鉢植えにしたら何の変哲もないコーデックス・・・ってわけでもないけど。

鉢植え仕立てってのは全然アリ、というか普通にアリなんですけど、園芸店で売ってる状態は長期栽培には適していないと思います。着生植物なので、ポット植えのままだと根は弱々しく、水が溜まりやすく、根腐れしやすい。それを改善するような植え込みがいいんですが、例えば穴鉢にヤシガラやクリプトモス。もちろんすぐ乾くので灌水は多くなりますが、基本的には根に空気が通りやすい、水が流れやすい仕立てが良いです。乾きすぎるなら水苔刻んで混ぜたり。
用土植えはやったことないので詳しく分かりませんが、排水性の良い用土とか、植え替えをしっかりやるとかして環境とうまく合えばいけるでしょうね。

一番のおすすめはやっぱり板付け、ヘゴ付け。一番乾きやすいので芋を濡らし過ぎないし、根も見えるようになり、しっかり観察出来るので何かあったときにすぐ対処できます。
鉢植えだったアリダマを付けるのはちょっと難しいですが、真横に付けると枝に負担がかかったり落下しやすくなったり、あと単純に変なので、斜め上向きに付けるといい感じになります。ここら辺は写真を載せてまた別の記事に(出来るといいな)。

よく流通してるってことはここら辺のは低地性です。湿度は常湿で大丈夫ですが温度は気を付けないといけません。高温は40℃超えても大丈夫なくらい丈夫ですが、低温にはめちゃくちゃ弱いです。最低は15℃目安で。出来る事なら18℃あると安心ですね。10℃ぐらいでも大丈夫だったりしますが、長い間低温過ぎると危険です。



山採り株
さて、次は山採り株の栽培方法・・・なんだけど、まず始めに言っておくと
買わない方がいい
これに尽きますね正直・・・。株が大きければ大きいほど、です。まず活着までが難易度高いし、活着してもその後の生存率はかなり低いです。90%腐るぐらい思ってた方がいいです。
アリダマは主にパプアで漢方薬として売られていますが、謳い文句に「栽培は不可能だから貴重」って書いてあるぐらいです(実生は出来ますけどね)。



〇それでも買うなら!絶対に小さめの株!!

実生すると分かるんですが、小さいうちは全身が生長点ぐらい強くて、半分に切ったら2株になるぐらいです。なので小さめの株は比較的発根しやすいです。小さければ小さいほど実生と同じようなものですし。それが大きくなっていくと非常にデリケートに・・・。とは言っても枝挿しも一応出来るっぽいし(ちなみに葉からも発根したりします。その後育てたことないけど・・・)、玉が割れても生きてる株はあるんですが、輸送された根がない弱った状態では傷んだら死ぬか生きるかはほぼ運。

〇あと活着した株

活着してるということはもう養生が済んでいてかなり管理しやすいです。多少の水切れにも耐え、免疫力も上がっているので、もし一部傷んでしまっても腐りが止まったり、生き残る確率が高いです。これで腐ったら環境づくりが出来なかったか運が悪かったか(原因不明の突然死みたいなのもある)。

〇それでもかっこいいから大きいの欲しい!未知のアリダマを苦しんでもいいから栽培したい!という方は、アリダマをよく知ってる業者から購入すること

これはもう紹介出来るくらい限られてますが、一番有名なのは葉風空間さん。国内で初めて本格的にアリダマを取り扱い始めた方です。あとSquamellariaを初めて国内に持ち込んだコケシノブログさん。(あと自分笑)
そもそも山採り株を養生して育てたりして販売してる人がほとんどいないですが、知ってる方なら危なそうな株はまず出さないです。根が無くても、現状一番状態の良い株を譲ってくれることでしょう。それでも枯れちゃう時は枯れちゃうんですけどね。でも忘れないで欲しいのは敢えて難しいことに挑戦をしているということ。
かなりの数の山採り株を買ってきましたが、長年残ってる株はありません。それでも何故自分はそれでも山採りを買うのか、そして採りに行くのかというと、欲しい種が普通に売ってないから!そして大株を買って腐るまでの間に種を採りたいから!です。
アリダマは古くに記載されてるものから数えると5属合わせて大体200種類近くあってそのほとんどが詳細不明。まだまだ未知の植物です。しかし先に述べた通り、現地では漢方薬になっていて、採り尽くされた地域もあるそうです。何でもそうですが、山採り株に未来はありません。全てはなんとかして種が採れるように!・・・まぁ、自然そのままの状態は超かっこよくて惹かれるんですけどね!でもその姿を栽培で再現出来たらそれが一番最高じゃないでしょうか?それが園芸ってものだと思います。

・・・なんだか話が逸れましたが、とりあえず栽培の仕方の記事なので一応山採り株の養生、栽培方法を・・・
とりあえず発根ですね。色々やり方あると思いますが、濡らさないと発根してこないで萎むので、芋の根本付近を常に濡らしつつ蒸れないように管理してこまめに観察して祈る。基本祈る。って感じです。少しでも傷まないように、古い死んだ根は切除して、根本は殺菌して、隙間が出来ないように植え付ける。って感じです。水かけてれば意外と萎まないんですが、成長してるから発根して活着してると思ったらダメです。丸一年発根せず成長してて突如腐るなんてこともあります。

栽培方法は種によるんですが、同定できないような種もたくさんあるので、とりあえず標高と場所を調べましょう。


状態悪くなった時の対処法
○芋が萎んできた→単純に水切れだったら水やれば元に戻ります。それでも戻らない場合はネジラミを疑いましょう。通風が悪いと結構付きやすいです。駆除すればすぐに戻ります。それでも戻らなかったらどこか腐ってる可能性が高いです。

○芋が一部柔らかい→山採り株ではよくあるんですが、一部元から傷んで自然に治った箇所があったりします。その箇所は中が黒くスポンジ状になってたりします。放置して問題ないです。触ってみて表皮がずるっと崩れたらそこは腐ってます。それかもう手遅れです。

○芋が腐り始めた→すぐに腐った箇所を切除して切り口をトップジンMペースト等で殺菌。屋外温室持ってる方はホース等の水圧で腐った箇所を吹き飛ばして乾かしてもう一度植え付け。室内栽培の方が水圧で飛ばすやり方したら、放置せず殺菌した方がいいと思います。空気悪いですからね。根本が腐った場合、かなり希望薄です・・・。発根して植え付けやすい箇所が無くなるのはかなりキツイ・・・。一縷の希望をかけて枝を切って挿しましょう。腐りを取る場合も枝を挿す場合もなるべく早急にやらないと成功率は低いです。

○枝が腐った→すぐに切除しましょう。なるべく健康な箇所から切って殺菌。Myrmecodiaの場合大抵枝は一本でここが腐るとかなり危ないんですが、放置してもいいこと無いので切って祈りましょう。

○葉が垂れてきた→水切れだったら水やれば戻ります。あと急な環境の変化で落葉することがあります。離層が出来て葉がポロッと落ちるなら大体問題ないですが、枝から落ちずに葉が垂れてる状態はほぼ間違いなく芋に異常があります。ネジラミなら駆除すれば戻りますが、そうじゃなければ手遅れの可能性が高いです。次第に腐り、枯れます。大抵枝に影響が出たら末期です。

○芋に穴が開いてる→アリの入り口です。

○葉にカイガラムシのようなぶつぶつがある→Myrmecodiaの場合、葉にまるで虫が付いたようなブツブツが付いてたりしますが、これは分泌物が固まったもので、特に多湿な環境に移したときや、現地葉に多かったりしますが、何の影響もありません。何かの生理現象だと思います。出始めはカルスのような半透明のものがプツプツと出てきます。見分け方としては、分泌物なら削ぎ落とそうしても剥がれません。カイガラムシなら剥がれて潰すと茶色い体液が出るはずです。



あまりまとめられなかったような気がするけどこんな感じでしょうか・・・。これだけ書いたけど栽培やアリダマに関してはまだまだあります。色々と試行錯誤してきたけど、自分もまだまだです。ここには経験に基づいて書いてますが、全て鵜呑みせず、参考にまた試行錯誤してもらいたいです。

わからないことだらけのアリノスダマ、難しいけど面白いですよ。